その世界は灰色だった

空を覆う灰色の雲
地表に降る灰色の雨
大陸を囲む灰色の海
色を忘れた灰色の花

世界の全てが灰色に染まっていた

世界は緩慢に、だが確実に、避けられない終焉へと向かう

人体が灰と化してしまう奇病の流行
地面を汚染する灰の雨
人々は嘆く 終わりは近いと
人々は憤る 終わりはもうすぐなのかと
人々は安堵する 終われば苦しまずに済むと

人々は終わりを心から恐れ、心から待ち望む

――その世界は灰色だった
まるで灰色しか存在しないかのように


全てが【はいいろ】に支配されていた


********


長きに渡る戦争により厚い雲が空を覆い、太陽が見えなくなった世界
人々は灰色の空を見上げては溜息をこぼしていた
空から降り注ぐのは光ではなく、にごった灰色の雨か灰そのもの
戦争のキズアトは、世代を越えて人々を苦しめていた

そんな世界で、数年前からある奇病が流行り始める
「死灰病」と呼ばれるその病気は、人の身体を灰へと変えてしまう怖い病
発病すれば助かる術はない

太陽を失くし、奇病が猛威を揮う世界
人々はついに世界が終わる日が来たのかと嘆いた

けれど、それでも人々は生きることに一生懸命だった
大切な何かを、大切な誰かを守るために、みんな必死だった



―― そんな【はいいろ】に支配された世界を彼等は旅する ――